犬は近視でモノクロに見えていると昔は言われていた。どうやら青と黄色は解るらしいということなので、改めて調べてみることにしてみました。
目に入った光が水晶体で屈折し網膜に焦点を結び、視神経を通じて脳に伝達され色と像を認識します。網膜には色を見分ける錐体(すいたい)細胞と暗いところで光を感じ取る桿体(かんたい)細胞があります。
犬と猫、そしてほとんどの哺乳類は錐体細胞を2種類保持しており、2色型色覚なんて言ったりもするそうです。
色の見え方は、青色と黄色とグレーの3色で、緑~赤は区別し難いそうです。
赤はグレー、ピンクは薄目のグレー、緑はちょっと緑が入っているようなグレーという感じでしょうか。
視力も0.2~0.3とのこと。そりゃ、目の前のボールがすぐ見つけられないことにも納得です。
ただし、動くものに関しての視力には優れており、遠くの距離でも動くものにはしっかりロックオンできるそうです。昔から犬に追いかけられたら走らずに立ち止まれと言われていますが、(逃げるものに興奮して余計攻撃的になる要素を回避する意味合いが強いのですが)
静止してしまうと風景に紛れてしまいロックオン出来なくなる効果もあるのかもしれません。
犬の先祖が夜行性だったので、色を見分けるよりも暗くても周りが見える方が必要とされました。
そこでタペタムを獲得したのではないかと思います。
タペタムは日本語で輝板(きばん)、輝膜(きまく)と呼ばれ、網膜後ろの網膜色素上皮や脈絡膜に存在します。
網膜の視細胞を通り抜けた光を跳ね返してもう一度細胞膜に戻すので視細胞に弱い光でも感じ取れます。暗闇で目が光るのはタペタムのせいなんですね。
タペタムは大体の哺乳類が差はあれど持っています。持っていないのは人間とコウモリとシベリアンハスキーぐらいだそうです。
コウモリは超音波を発しその反響によって物体の距離と方向、大きさなどを知るエコーロケーションがあるから必要ないのかもしれません。
ハスキーは一年中雪があり夜間でも十分明るい環境のため、タペタムが退化してしまったと考えられています。後、青い目も光を通しやすいと言われています。
人間の目はというと、3色型色覚で、赤・緑・青の3種類の錐体細胞を持っています。
色覚に関しては人間が他の動物よりも優れているかというと、そうでもないんです。さらに上がいました。それは、4色型色覚を持つ一部の魚類・鳥類・爬虫類・昆虫です。
なんと紫外線を見ることができるそうなんです。
モンシロチョウはオスもメスも白い羽で人間にはオスメスの区別がつきませんが、メスは紫外線に反応するのでモンシロチョウたちには違いが明確です。
花の蜜をエサとする昆虫には、花びらは黒く蜜のあるところは白く反射し目立つようになっているそうです。
ハチドリも花の蜜が主食で、昆虫と同じように見つけることができるんだとか。
カラスのゴミ漁りにも紫外線が活用されています。カラスは嗅覚は鈍いのですが、大量のゴミくずの中から紫外線に反射した生肉や果実などをピンポイントで見つけることができるそうです。対策としては、食べ物のゴミは新聞紙で包んでみえなくするのがオススメです。
紫外線は葉の上面と下面のコントラストが誇張されるため、森林構造を高解像度で見ることが出来き、込み合った森の中でもスムーズな移動に役立っているのかもしれません。
ちょっと寄り道で、
紫外線を見ることができる生き物がいるなら、赤外線を見ることができる生き物はいないものかと調べてみたところ、赤外線を見る生き物はいないようです。ただし感じることはできる生き物はいます。
それは、ヘビです。
ヘビにはピット器官というものが鼻と目の間にあり、動物の体温を感じ取って狩りにいかしているそうです。
錐体細胞の数が生物により2色型、3色型、4色型と違うのは何故なのか、昔に遡ってみようと思います。
そもそも「色」とは何なのか?ですが、色は存在していません。
電磁波の一種である光の波長の違いを受けとめる機能により、それを私たちの脳が色として認識しているんだそうです。
人の錐体は3種類あり、L錐体は長波長付近の光(赤)、M錐体は中波長付近の光(緑)、S錐体は短波長付近の光(青)に高い感度で反応する視物質をもっています。
それらが光を吸収して視神経を通って脳に伝わり、色として認識されます。
地球上に生物が誕生し、原始の生物は近紫外~青の辺りの波長域に対する視覚(S錐体の原型)を獲得します。やがて脊椎動物の祖先が現れ、更に魚類、両生類、鳥類、爬虫類が順に分化していく過程を経て、哺乳類の祖先が現れます。この進化の過程で、それぞれの動物たちがその生息環境に適応していく中で色覚も最適化して4色型にまで進化していきました。
恐竜がいた頃の哺乳類はというと、哺乳類は夜行性の生活をするようになり、それに応じて視細胞も桿体の性能が発達し、4種類あった錐体の内2種類が退化しS錐体とL錐体からなる2色型になったと考えられています。
恐竜の絶滅により霊長類の祖先であるサルの中に、再び昼行性に移行していくものが現れました。突然変異によりM錐体を獲得したものが現れ、現在の人類の3色型に受け継がれて行ったと考えられています。
S錐体とL錐体の2色型の場合、緑~赤の区別がつかなかったが、M錐体を獲得したことで、茂った葉に熟した赤い実や黄緑色の若芽を見つけることができるようになったと言われています。
犬や猫などが2色型であるのは、夜行性主体の生活の中で、色覚よりも嗅覚や聴覚を発達させていったからだろうと考えられています。
まとめですが、
・犬・猫は2色型色覚で、色の見え方は、青色と黄色とグレーの3色で、緑~赤は区別し難い。
・網膜の後ろにタペタムという光を増幅する膜があるので暗闇でもわずかな光で活動できる。
・視力は弱いが動体視力は良い。
・嗅覚と聴覚が優れているので、視力や色覚は獲物を狩って生きていく上ではそこまで重要ではなかったので退化していったと考えられている。
生き物はその生息環境により必要な機能はより進化させ、そこまで必要でない機能は退化させと個性的な発展を遂げて今の姿になっていると思うと面白くて興味が尽きません。
おまけ
最近になって犬の目の水晶体が紫外線を通すことがわかったそうです。
これが見る能力に関係あるかはまだわかっていませんが、もしかしたら紫外線を感じているかもしれないそうです。
犬の眼球に「クリプトクローム1」というたんぱく質が見つかっており、これとよく似た物質の「クリプトクローム1a」は渡り鳥が方位を知るのに利用するなど、鳥類では磁気センサーとしてはたらいていることが知られています。
もしかしたら犬も目で磁力を感じて、遠く離れたすみかに帰るためなどに使っているかもしれないと、帰巣本能のなぞの解明に役立つのかもしれませんね。
紫外線を見る生き物に哺乳類は出てこないのですが、例外としていました!
トナカイです。
トナカイの主食のハナゴケが紫外線を吸収するので、雪と見分けがつくようになったのかもしれません。冬に目が金色から青色に変化するのも、光のささない北極圏で光を効率よく取り込むためだとか。
ここからは、蛇足です。
色とは、電磁波の一種である光の波長の違いを目が受けとめ、それを私たちの脳が色として認識したものです。
電磁波には、ガンマ線、エックス線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、電波と、多くの種類があります。
可視光線とは、人が色として認識できる波長域380㎚(紫)~780㎚(赤)を言います。
目では見えない380㎚より短波長を紫外線、780㎚を超える波長域は赤外線と呼びます。
紫外線・可視光線・赤外線を広義的に光と言います。
光よりもずっと波長の短いものを、ガンマ線、エックス線と言い、光よりもずっと波長の長いものをマイクロ波、電波と呼びます。
エックス線はレントゲン、紫外線は消毒、マイクロ波は電子レンジ、電波はラジオやテレビ、通信等など日常生活に無くてはならないものばかりですが、一番身近に感じるのは
赤外線ですね。遠赤外線大変お世話になっております。
美味しいご飯から、部屋を暖かくしてくれて昔からの馴染みを感じます。
ただ赤外線は物を暖めるだけではなく、物体の温度を映像化してしまうサーモグラフィーカメラや、暗闇でも撮影できる赤外線カメラもあります。
ちなみに、暗視カメラ(高感度カメラ)もありますが、こちらはカメラ内部の光センサーの感度を上げることで暗所においても鮮明に撮影できるが、最低限度の明るさ(豆電球程度)がないと撮影できませんが、赤外線カメラは赤外線を照射するLEDを搭載したカメラで物体に反射した赤外線をとらえて映像を撮影します。
映像の鮮明さには暗視カメラに劣りますが、真っ暗闇の場所の防犯や、野生生物の観察等に使われています。
赤外線をけしからん使い方にも出来てしまうそうで、注意喚起しておこうと思います。
それは服を透視できるカメラです。
一般的なデジタルカメラのシリコンセンサーは、人間の目で見える波長約750㎚を少し超えた1000㎚程度の波長まで感度を持っているそうです。
このままだと人間の見え方と写真にずれが生じてしまうため、人間の目の感度に合わせ、センサーの前に750㎚から先をカットするフィルターが付けられているのですが、この赤外カットフィルターを外し、逆に750㎚以下の可視光をカットするフィルターを取り付けると、750~1000㎚が見える近赤外カメラが完成してしまうそうです。
市販のカメラを改造して個人売買などで流通しているそうですが、カメラ内部の改造になるので、見た目で判別することは困難です。
盗撮の対策としては、なるべく透過しない生地のものを選ぶことです。
綿の方がポリエステル生地より透けにくいそうです。ちなみに赤外線を吸収する素材もあるのですが、一般には出回っているのは稀です。綿100%の黒シャツが30種類あれば、そのうちの1種類ぐらいだそうです。
他の対策として、ふんわり重ね着をすることでくっきり画像をぼんやり画像にすることはできますが・・・
盗撮カメラ・・・、そんなドラ〇もん的なことが出来てしまうなんてビックリです。
怪しい動きのカメラ小僧さんにはご注意ください。
以上蛇足でした。
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