水道水から寄生虫が原因の食中毒があった!?と虫をあれこれ調べていたら興味深いものが出てきました。
原因はクリストポリジウム原虫です。クリストポリジウムは水や食品から感染する原虫で、さまざまな哺乳類、鳥類、爬虫類に寄生しています。症状は下痢や腹痛ですが、免疫不全がある方の場合下痢が重症化して死亡することがあります。
水はみんなが使うものなので、感染の規模が凄まじく、1993年にアメリカのウィスコンシン州では40万人以上が感染し、死亡者が約400人出たそうです。日本では、1994年に神奈川県の雑居ビル利用者461人が汚染された受水槽から感染し、1996年埼玉県で町民8812人が感染した事例があります。
クリストポリジウムは塩素消毒が効かないので、当時は想定外のことで大勢の感染者を出してしまいましたが、現在は対策が取られています。
このような失敗からの学びと先人の努力によって安心して水道水が安全に飲めることに感謝しつつ、歴史は繰り返すものだなと思うのでした。
それは、水道水のPFAS汚染です。(今回は自然が原因ではなく人災なのでもっとたちが悪いですが)
PFAS(ピーファス)とは、人工的に作られた有機フッ素化合物の総称です。4700種類以上の物質があり、その代表格がPFOA(ピーフォア)とPFOS(ピーフォス)です。
フッ素コーティングのフライパンや化粧品、レインコートなどの撥水加工、半導体の生産工程などさまざまなところで使われています。
ところが、発がん性や甲状腺疾患などの健康被害が明らかになり、1990年代後半には一部の研究者から問題提起が起こります。
米国では2000年代初頭にPFOS、 PFOAの製造の先駆者である3M社が自主的に製造を中止すると発表しました。2009年に国際条約(ストックホルム条約)でPFOSが規制の対象となり、2019年にはPFOAが対象となりました。日本でも2019年にPFOS、2021年にPFOAの製造と輸入が法律で禁止されました。
2002年頃には調査チームが発足しており各地で調査が始まりました。東京の多摩川ではPFOS、大阪の淀川ではPFOAが高濃度で検出されました。
もうすでにPFAS汚染が始まっていたのでした。いえ、もっとずっと前からこっそりと知らぬふりして始まっていたのです。
PFAS汚染が問題として表に出てきたのは2016年頃からです。(もっと前からだったらごめんなさい。調べ切れていないです。)
沖縄の在日米軍嘉手納基地で使用されたPFASを含む泡消火剤による汚染が疑われるため、2014年から沖縄県が独自で調査し、嘉手納基地排水される大工廻川を取水源にする北谷浄水場のPFOS、PFOAを測定したところ、70ng/Lを検出されたことを2016年に沖縄県が公表しました。
2019年には普天間基地近隣の宜野湾市住民に血液検査を行ったところ高い血中PFAS濃度を示しました。
東京の米軍横田基地でも問題が表面化しました。
2019年の都の調査で横田基地周辺の4か所の井戸で高濃度のPFOS、PFOAを検出しており、2020年1月に横田基地周辺の水道水、井戸水がPFAS汚染されていると新聞で報じられました。
横田基地では1970年代からPFASを含む泡消火剤を使った消火訓練が定期的に実施されてきました。そして泡消火剤の土壌への漏出が2010年からあったが、日本側には通報されていない、という事実をジャーナリストのジョン・ミッチェル氏が米国情報公開制度の米軍文書を入手し、2018年沖縄タイムスが報道していました。
2023年にこの件に対して追及を受けていた防衛相は、2022年12月に米軍が漏出を初めて認めたことを明らかにしました。
2020年に厚生労働省と環境省が水道水や地下水などに暫定目標値を設定し、PFOSとPFOA合わせて50ng/L以下と定められました。
各自治体でも調査が行われ、汚染が次々と判明しました。
2021年3月に愛知県の航空自衛隊小牧基地に近接している豊山町の豊山配水場から150ng/Lが検出されました。小牧基地で使用された泡消火剤の漏出による地下水の汚染が疑われています。
岐阜県各務原市では、2020年に99 ng/L、2021年計測なし、2022年130 ng/L、2023年110 ng/Lと計測されているものの公表しておらず、市は県の指導を受けてようやく公表しました。取水していた三井(みい)水源地は航空自衛隊岐阜基地に隣接しています。
他にも、目標値を超えているが明確な汚染源が特定できない地域が多々あります。
2020年6月、環境省がPFOS及びPFOAを扱う工場付近などの排出源に近い地下水や河川など全国171か所を調査した結果が公表されました。
それにより曖昧になっていた汚染が白日の下に晒されて公害調停が起こります。
大阪府摂津市の地下水が1812ng/Lと基準値の36倍のPFOAが検出されました。
市と大阪府とダイキンは、PFOAによる汚染を遅くとも2009年から把握しており、21回も3者会議が開かれていますが、住民に工場からの汚染の実態を知らせませんでした。
2021年11月京都大学名誉教授が摂津市内にあるダイキン工場(淀川製作所)周辺の住民9人の血液検査を実施したところ全員から高濃度のPFOAが検出されました。
住民団体が設立され、ダイキン工業や市に対して汚染の実態調査、対策などをもとめてきましたが、ダイキンは住民が求める情報開示や補償にまったく応じませんでした。
2025年12月23日 住民団体がダイキンに対して公害調停を大阪公害審査に申請し、
2026年7月1日 第一回公害調停が大阪市内で行われました。
ちなみに公害調停とは、裁判所による司法的解決とは異なります。各都道府県に公害審査会などが置かれており、公害の実態を調査し、双方の解決を図るのだそうです。
ダイキンは大阪府以外でも公害調停が申請されています。
2026年4月24日岡山県で、活性炭リサイクル業者がダイキンに対して起こしました。
2023年10月岡山県吉備中央町の浄水場のPFOA汚染に県職員が気づき問題が発覚しました。2020年800ng/L、2021年1200 ng/L、2022年1400 ng/Lを検出しているにも拘わらず町は対応を取らないまま数値のみを県に報告していました。
水源の近くの資材置き場にPFOAを含んだ活性炭が置かれており、それが地中に染み出して水源を汚染していました。地元の活性炭リサイクル業者は使用済み活性炭を資材という名目で15年放置していました。
責任を問われ町から損害賠償を請求されましたが自社だけでは責任を負えなくなったので、使用済み活性炭の引き取り先であったダイキンにも廃棄物排出者の責任として相当な部分を負担すべきだなどとして、2026年4月に町とダイキンに対して公害調停を県公害審査会に申請しました。
公害というと、高度成長期の工場から排出されたあきらかに有害物質の被害を想像しますが、今の公害は静かに住民に気づかないようにやってくるので陰湿でたちが悪すぎです。
この公害に立ち向かって行動を起こし、何もしない行政を動かして少しでも状況を改善しようとする市民の皆さんの行動力に感銘を受けます。
私にもし、この人たちと同じことが起こったら絶望でしばらくは動けないかもしれませんが、立ち向かってきた市民の人たちがいることを思い出して、自分のペースで自分にも出来ることをやっていこうと思うのでした。
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